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淡い恋心

第35章 抑えられない想い【虎太/N】



『はい、降矢です』

「……ッ……」

『どちら様ですか?』

結局電話したが一番に悠鬼が出たので、可愛い声が耳に入って来て虎太は熱くなる顔を抑えて悶える。

『虎太ちゃん?』

「えっ!?……何で?」

『くれるかなぁ?って……ずっと待ってたから』

探る様に名前を聞いて来た相手に、自分が電話してくれるのを待って居てくれた事に感激すると、虎太は益々何も言えずに黙ってしまう。

『ダメねぇ……電話してってお願いしたの私なのに……声聞いたら会いたくなっちゃう』

「!?」

『虎太ちゃん、ちょっとだけお名前呼んで?』

「悠鬼」

『ふふっ、ありがとう!』

「悠鬼、もしも竜持と凰壮も……俺と同じ状況だったら……そういう事言うのか?」

『小さい頃に言ったと思うけど……虎太ちゃん次第よ?』

「俺次第って……俺は昔から悠鬼が『いやぁ~!』……!?」

『ちゃんとお顔を見て言って!大事な言葉は男の子から言って欲しいの……私も女の子よ?』

「……っ……うん、悪い」

『気付いてた?……今は虎太ちゃんにしかちゅーしてないの』

「マジで!?……俺だけッ」

『ふふっ、疲れたでしょ?もうおやすみなさい!』

「あっ!……悠鬼」

虎太はやっと悠鬼の自分を想う気持ちに、確信を持つ事が出来た。
今直ぐにでもこの想いを伝えたいけど、自分自身も電話越しに言うのは嫌だ。
同じ顔の兄弟誰とも違い、自分だけに向けられた想い。

告げたら悠鬼は受け止めてくれる。

年を重ねる度に余裕が無くなって行く自分に怖くなって行くが、虎太は愛しくて更に悠鬼への気持ちが募るばかり。





合宿を終えて電車の時間を教えると、駅の改札口で悠鬼が一人で迎えに来てくれたらしく、虎太の姿を見付けると両腕を広げて満面の笑みで出迎えてくれる。

『虎太ちゃん!お帰りなさい!』

「……っ……悠鬼」

『?……んっ!?』

ツカツカと若干早足で近付いて来る虎太を見上げると、ドスンっと荷物を下ろして唇を奪われる。
虎太の急な行為に驚いて唇を離されると、悠鬼は顔を真っ赤に染めて自分の口を両手で押さえる。

そんな相手を見た虎太は、感情が抑えられずにぎゅっと抱き締めてずっと抱えて居た想いを伝える。
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