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淡い恋心

第35章 抑えられない想い【虎太/N】



「んっ……旨い」

『ふふっ、良かった!……向こうでお弁当食べて?』

「うん、食べる」

悠鬼の作る料理は本当に旨くて、親が作るのより好きだ。
こんな風に思うのは俺らしくないかもしれないけど、悠鬼のは……っ……愛情がいっぱい詰まっていると思うから……

そう思いたい。





そして更に時間が経つと竜持と凰壮も起きて来て、四人でテーブルを囲んで朝食を取る。
キッチンのカウンターに四つの弁当箱が並んでいるのを見た凰壮は、悠鬼に視線を向けて口を開く。

「昼って向こうで飯出るんじゃねぇの?」

『えっ!そうなの!?……なら凰ちゃん持って行く?』

「良い、俺が食うから」

『でも……無理しないで?』

「無理じゃない……大丈夫だから……」

『ふふっ、ありがとう虎太ちゃん!』

悠鬼が俺に作ってくれた事も気持ちも、俺は一つも無駄にしたくないんだ。
俺の望む気持ちを込めてくれているかは分からない。
二人と同じかもしれない……



虎太が出掛け様と玄関に行って靴を履くと、悠鬼が追い掛けて来て手を握って来る。

『電話してね?』

「……俺、電話苦手」

『知ってるけど、声聞きたくなっちゃうと思うの……寂しくなっちゃうから』

「!?……悠鬼が?」

『……っ……うん……いや?』

「嫌じゃない!絶対するからッ!!」

同じ顔が二人も家にいるのに、恥ずかしそうに自分が居なくなって寂しいと言ってくれる悠鬼に胸が詰まる。
高校に上がって幼い頃よりも可愛くて綺麗になって行く相手に、平常心で居られる訳がない。
普段は口下手で大人しい虎太が、珍しく必死にそう言ってくれたのが愛しく感じてしまい、悠鬼は虎太の手を引っ張るとちゅっと頬にキスをする。

その時のキスはいつもより長く感じた。






練習中は集中して行えたが食事の時や下着を見ると、時々ふっと悠鬼の事を考えて頬を押さえる。

『電話してね?』と言われた事を思い出すと、声が聞きたくなるというのは共感し、虎太は携帯を持って人の居ない場所に向かう。

悠鬼は携帯を持って居ないので、家に掛けるしかない。
もし相手以外が出たら即座に切ろうと考えている。
今朝の声が兄弟にも聞こえているだろうからだ。
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