第34章 一途な想い【勝呂/N】
あたし達が暫く女風呂で談笑していると、最初は燐くんの楽しそうな声が響き渡っていただけだったが、徐々に男風呂が騒がしくなって来たのに気付く。
「騒がしいわね」
『まさかでも廉造の奴、覗きとかしてへんやろうな』
「えっ」
『竜ちゃんやったら大歓迎やけど、あの変態野郎がやってたらぶっ飛ばすで』
「勝呂でもダメに決まってるでしょ!」
『分かっとるわ!竜ちゃんがそないな行動取る訳ないやろ!カスじゃあるまいし!……でも全く興味ないとかやったらショックやわ』
この状況で廉造が大人しくしているとはどうしても思えないあたしは、躰にタオルを巻いて男風呂と仕切ってある壁を一通り見て回る。
廉造見たいにあから様な変態行動は引くが、全く興味がないって事は女として見られて居ない事になる。
これで何とも思われてなかったら、流石にあたしも立ち直れる自信ないわ。
『大丈夫そうやね』
「悠鬼ちゃん!?」
『ん?』
覗き穴がない事を確認すれば安心して再び湯船に浸かろうと壁に背を向けると、しえみちゃんが慌てた様子であたしの後ろを指差して来る。
疑問符を浮かべながら顔だけ後ろを向くと、壁にヒビが入りそれを視界に入れた途端に壁が大きな音を立てて崩れ落ち、向こう側の男風呂と繋がってしまった。
「八つ姫を喰らう」
『廉造……お前はホンマに救い様のない阿呆やな……』
「ま、待って!悠鬼ちゃん!」
『使いモンにならん様にしたろうか?……ぁあ゛!?』
「「うわぎぃやぁああ!!」」
燐くんと廉造は霧隠先生とあたしに容赦なくシメられ、両方の風呂場から男の悲鳴が響いた。
『三猿鬼?』
「人の良くない本音を見ざる・言わざる・聞かざる知恵を説く置き物なんかに憑依する悪魔なんです」
『それで廉造と燐くんが本音を言うたん?燐くんは何て言うたの!?』
「えっと……」
「言うなよ!子猫丸!!」
『教えてぇな子猫ちゃん!耳打ちでえぇから!』
「じゃあ……」
「子猫丸ぅ!?」
『いやぁー!あたしもめっちゃ言われたい!!竜ちゃん……』
「絶対言わへんからな!!」
『悠鬼のだけが見たいとか、誰にも見せたくないとか、悠鬼は俺のもんだとか!!』
「言うなよぉー!!」
「そないな恥ずかしい事言えるか!」
『あたしやったら言えるっ!』