第34章 一途な想い【勝呂/N】
『身内に裏切り者が出たら何を信じてえぇのか解らなくなるわ』
「あぁ」
『しかも一番近くにいた阿呆な幼馴染みやで?えぇ笑いもんとちゃう?』
「せやな……何も出来へんかった俺が情けないっ」
『それはあたしや子猫ちゃんも同じや。全然気付かへんで過ごしとった……案外、スパイ向いとるで』
「志摩が自分で選んだ道なら俺はもう何も言わん」
『やっと吹っ切れたって顔やねぇ!竜ちゃんにいつまでも暗い顔されんの堪らんわぁ~……弱いところ見せてくれるんは嬉しいけど、怖い顔しとったら誘惑出来へんやろ?』
「!?」
廉造と二人でちゃんと話し合えた事ですっきりした顔をしている竜ちゃんを見ると、少し廉造に妬いてまうわぁ。
廉造の裏切り行為が発覚してから竜ちゃんはずっと廉造の事ばかり考えていたから。
死を覚悟するくらい心配しとったのも事実で、真面目で正義感の強い竜ちゃんなら下手したらそうなっていたかも知れん。
竜ちゃんにはいつでもあたしを想っていて欲しいから、気持ちが離れない様に誘惑して口説いて繋ぎ留めとかんと、どんどん置いてかれてしまいそうで少し怖い。
『竜ちゃん!はい、あ~ん!』
「やめぇや!?こないな所でっ!!」
『あたしは竜ちゃんを絶対に裏切らんで?あたしにとっての一番は竜ちゃんやもん。せやから冗談でも死を選ばんといて?もし今回の事で竜ちゃんがそういう目に合うてたら、あたしは二度と廉造を許せへん』
「……」
フォークを握る自分の手が微かに震える。
正直裏切り者の廉造なんてあたしにはどうでもえぇ、竜ちゃんさえ失わなければそれでえぇねん。
俯いているとあたしの手をガシッと力強く握られて顔を上げると、少し強引に引き寄せられて差し出したおかずをあたしのフォークから食べてくれた。
「口にせぇへんて約束する……暫くはお前に付き合うたるから機嫌直せ。悠鬼にまで暗い顔されたら調子狂うわ」
『付き合う……ホンマ!?』
「えっ……」
『ホンマにあたしを竜ちゃんの彼女にしてくれるん!?』
「そういう意味とちゃうわぁ!!」
『しえみちゃんに話さなぁ~!!』
「人の話しを聞けぇー!!」
悠鬼の逃げ足は速く、既に杜山さんや神木のところに行ってしもうた。
俺が言いたいんわ擦り寄られても我儘を言われても、暫くは邪険にせん言う意味やったのに……