第33章 たった一人の想い人【半田/N】
悠鬼と友人二人で普通の声量で話していたが、いつまでも隠している悠鬼に腹を切らしたのか、友人はガタッと立ち上がって教室にいる全員に聞こえるくらい大きな声で暴露してしまった。
大騒ぎになった教室で焦って慌てた悠鬼は、若干涙目で半田の方をチラっと見てしまい、それを友人は見逃さなかった。
「半田くんの班に居るの!?」
『なっ!?違うわよ!』
「顔真っ赤だもん!半田くんなの?それともレオくん?」
「何で二択なんだよ!」
「彩條さんなら半田くんとも似合うよ!」
「レオには勿体ないと思うけど、半田くんなら」
『いやっ……止めてっ……』
「そんな訳ないだろう」
『「!?」』
友人と周りが悠鬼を責め立てているのを見た半田は席を立ち上がると、相手の好きな人が自分な筈がないと言い切る。
「彩條の好きな相手が俺な訳がない」
『!?……っ……えぇ、そうね……違うわッ』
そう言葉を呟いた半田に悠鬼は胸の奥を刺される様な苦痛が襲い、胸元で自分の両手を握り締めた悠鬼は必死に笑顔を浮かべてそう答えた。
その表情は今にも泣きそうな程悲しく切なそうで、半田は自分の言葉に嫌気が差したが何も言わずに教室から出て行った。
(あれは絶対悠鬼を傷付けた……助け様としたのに逆に傷付けた……やっぱり俺に悠鬼は似合わない、こんな嫌われ者に合う筈がないッ!!)
「悠鬼……ごめんね?」
『いいえ、私こそごめんなさい……友達に隠し事はいけないの解ってるけれど……本人にも気付いて貰えて居ないのに他の人に言うのは違うんじゃないかって……』
「うん、もう聞かないよ……結ばれる様に応援するから」
『ありがとう』
友人は今ので気付いたが、敢えて気付かないフリをして悠鬼の恋が実る事を願った。
彼女を見て居ると恋する事が本当に美しいものなんだと、胸の奥がぽっと温かくなる。
「恋愛成就のお守り買おうね!私から贈るから!」
『えぇ、私からも贈らせて』
修学旅行当日、悠鬼達は京都へとやって来た。
「自由行動だって!早速神社でお守り買おうよ!」
『分かったから引っ張らないで』
「あっ、半田くん達だ!」