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淡い恋心

第33章 たった一人の想い人【半田/N】



「風紀を乱して所構わず女子を誘惑する不埒者として、会長が半田くんに罰を与えたんだよ!」

『それで何故スカートを?』

「一年間、女子の制服を着て生活しろって……彩條さんも似合うと思うでしょ?」

『せ……半田くんなら何でも似合うと思うけれど……流石に女の子の制服は』

「じゃ!半田くんを追うから!」

『あ、相沢くん!……清くん』

男は男、女は女の服を着るべきだと思っている悠鬼は、半田の身を案じて心配そうに走って行った先を見つめるが、脚の速い半田が早々捕まるとは思えないので深く関わらなかった。




次の日になって朝に半田を見掛けた悠鬼は、普段は周りに挨拶をせず自分から接しようとしない半田が、元気に明るい笑顔で挨拶をしているのを見てしまう。

『せ、清くん?』

悠鬼はその日一日、普段とは正反対な変な半田を何度も目に入れてしまい、知らない女子に迫って居たりキスしてあげる等と軽い男になっていた。

『清くん!どうしたの?何で……』

「彩條さん!?いやぁー大和撫子が僕を名前で呼んでくれるなんて光栄だなぁ!キスしてあげようか?……ぐはぁ!」

『清くんに似た顔で彼を穢さないで頂戴!……清くんを何処に隠したの?清くんの人気に嫉妬して何処かに閉じ込めたのでしょう?』

「ち、違うよ!僕は本物だよ!記憶喪失で……」

キスしてあげようか?等と言って近付いて来た半田の偽物だと思っている悠鬼は、容赦なく相手の頬を引っ叩いて抵抗した。

『記憶喪失だったとしても長くいる私を、清くんが苗字で呼ぶのは可笑しいわ……気分悪い、その姿でまた私の前に現れたら許さないわよ……』

「は、はい」

悠鬼の本気で怒った顔を初めて見た半田は、驚愕してブルブル躰を震わせて怯えた。
それは記憶を戻してもハッキリ覚えて居り、少しの間笑顔の悠鬼の顔ですら見る事が出来ずにいた半田だった。

『清くん、おかえりなさい』

「ごめんなさい!」

『何もしてないじゃない?何で謝るの?』

「あっ……いや、何でもない」

『それより見て!これは上手に書けたと思うのよ!どう?』

「あぁ、上手く書けてるな。ここをもう少ししっかり止めて……ん?」

『ふふっ』

「…っ…悪い」

『清くんはそうでなくちゃ』
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