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淡い恋心

第33章 たった一人の想い人【半田/N】



「何やってるんだ……俺は……ッ……」

悠鬼は優し過ぎるから、巻き込んで俺の所為で友人を失わせる訳には行かない。
助け様としてくれているのも傍に居てくれ様としてくれてるのも、痛い程心に伝わって来る。

「ごめん……悠鬼」

俺は自分の手を握り締めた。




その日の放課後、半田は下駄箱で悠鬼と鉢合わせしてしまった。
相手が気付く前に隠れると、悠鬼が去って行くのを下駄箱の陰に隠れて見送る。
何度も一緒に登下校しようと誘われたが、それも全て断って来た。

今朝の事もあるので普通に出て行く事が出来ない半田だったが、悠鬼の居る方向から聞こえる言葉に耳を傾ける。

『あら、お手紙』

(!?)

「ラブレターじゃない?」

『恋文?』

「恋文って古いって!」

『でも恋文の方が温かい気持ちになるの……私も綺麗な字が書ける様になったら贈りたいわ』

「悠鬼に好きになって貰った人は幸せだね」

『ふふっ、私の気持ちはずっとあの人に向いているの。贈って下さった方には申し訳ないけれど、あの人以上に私の心を動かせる殿方は居ないわね』

「ねぇ!あの人って誰なの?良い加減教えてよ!」

『呼ばれてるからお断りして来るわね』

(悠鬼に贈られる物が果たし状な訳ないよな……悠鬼に想われている奴は本当に幸せ者だな。字も心もとても綺麗だ)

昨日、大切だと言われたのは友人としてだと思っているので、半田は自分が悠鬼の想い人だとは気付いていない。

友人の質問から逃げた悠鬼は、手紙を持ったまま昇降口を出ると学校の裏の方へと向かって行った。
こんな事は良くないと解っているが、気が気じゃない半田は静かに悠鬼の後を追って行った。


『お手紙を下さった方ですか?』

「彩條さん!……はい、来てくれて嬉しいです」

『ありがとうございます、私にこんなにも素敵な物を下さって』

「い、いえ!手紙だけだから!」

『お気持ちはとても嬉しいです……ですが私には長い間お慕いしている方が居ます。貴方のお気持ちをお受けする事が出来ません……ごめんなさい…』

「……知ってます。知ってても君に俺の気持ちを伝えたかっただけです……そんなにも丁寧に返されたらしつこく押し付ける事も出来ません」
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