第33章 たった一人の想い人【半田/N】
じゃんけんをして半田が勝ち、負けたい半田と勝ちたい相沢は利害が一致しているが、相沢はそれに気付いていない。
「俺はやらない。後はお前等で決めろ」
「半田くん!」
『清くん……』
その後も話し合いは続いたが、結局学級委員長は半田になってしまい、相沢は副委員長になってしまった。
……がこのまま半田の為に何もしないのは自分が許せないと思った悠鬼は、意を決して挙手をする。
『先生、私も副委員長にしてください』
「彩條!?……でも副委員長は一人で」
『えぇ、両方殿方ですし一人くらい女の子がいても宜しいんじゃないでしょうか?』
「彩條さんなら文句ないよ!」
「半田くんと並んでも似合うし!」
「えぇーなら私も立候補したぁーい!」
「副委員長は僕だよ!!」
『えぇ、ですから二人でせっ……いえ、半田くんを支えましょう?二本柱の方が安定しますわ』
「「「うをぉおー!!」」」
男子の支持を得て悠鬼も副委員長に任命されたのだった。
次の日、学校に来た半田は黒板の字を見て絶句した。
断った筈の委員長の座が、自分になって居たからだ。
『清くん』
「悠鬼、何でお前の名前が書いてあるんだ?……書いてなかっただろ?」
『えぇ、色々あって清くんが委員長になってしまったから……私が副委員長になって影ながら貴方を支えます……あまり頼りにならないかも知れないけれど、補い助けますから』
「…ッ…でも悠鬼が俺に関わったら……お前まで一人になるぞ?人気なのに……」
『?……大切な方の力になれるなら、私はそれでも構わないわ』
「…っ…」
悠鬼の曇りのない優しい声色と温かい表情に半田は、ぎゅっと胸を締め付けられる感覚を覚えるが、そっと握られた細く綺麗な手を振り払う。
本当は悠鬼の気持ちを受け止めたい。
本当は悠鬼の手を握り返したい……でも……
『!?……清くん』
「ダメだっ!余計な事するな!……俺は大丈夫だから悠鬼は何もしなくて良い」
『……はいっ』
悠鬼の震えている返事に相手の顔を見れないまま半田は教室を出て行き、悠鬼は振り払われた手を見つめて一人静かな教室で涙を浮かべた。