第31章 肝試し【芦屋/N】
そうして芦屋と悠鬼が合流して再びかくれんぼが始まると、二人で暗い墓地を歩き回る事にする。
隣を歩く芦屋は周りをキョロキョロしながら落ち着かずに怯えて居り、悠鬼の目には可愛く思えてしまう。
『花繪ちゃん』
「うわぁあ!?……悠鬼ちゃんっ……」
『花繪ちゃん、そんなに恐い?』
「……っ……ご、ごめん。情けなくて」
『可愛いから良いよ!』
「可愛いって言わないで……」
少しでも和らげ様と芦屋の腕に抱き付いた悠鬼だが逆効果になってしまい、芦屋は予想以上に大声を上げる。
悠鬼はどうしたら良いかと考える。
『……花繪ちゃん』
「な、何?……んぅ!?」
芦屋は名前を呼ばれて振り向いた瞬間に引き寄せられ、悠鬼の顔が近付いて来たと思ったら唇を重ねられて居た。
不意な事で驚愕した芦屋は、硬直して動けずにいる。
二人がキスをしたのは、この時が初めてだったのだ。
顔を離して何をされたのか理解した芦屋は、口を押さえてカァーっと顔を真っ赤に染めてしまう。
『……ちょっとは違うかな?』
「……っ……はい」
芦屋はかくれんぼが終わるまで、違う意味でドキドキが止まらずに居た。
「イチャ付くなっつったよな?」
「ごめんなさい!」
『花繪ちゃん不足だったんだもん……』
安倍達と合流すると芦屋が真っ赤な顔をして帰って来たので、安倍に睨まれた芦屋はバッと悠鬼と離れて即座に謝る。
離されて自分の手を握りながらしゅんと落ち込む悠鬼を見た安倍は、少し罪悪感を感じながら芦屋を見る。
「芦屋、彩條を送って行けよ」
「はい、そうします!悠鬼ちゃん、一緒に帰ろう?」
『うん!』
借金返済の為とは言え芦屋を働かせて、芦屋との時間を奪っているのは自分なので、安倍は少しでも一緒に居させる為に歩いて帰る様に告げる。
悠鬼はモノノケ庵に入れないのもそうだが、芦屋自身ももう少し彼女と居たいと思っているので、悠鬼に笑みを向けて一緒に帰る事にする。
安倍達と別れて周りに誰も居ないのを確認した芦屋は、戸惑いながらも隣を歩く悠鬼の手をそっと握る。
芦屋の手は若干震えて居て不思議そうに見上げると、顔を逸らして恥ずかしがっているのが分かる。