第31章 肝試し【芦屋/N】
『妖怪?』
「うん……」
『花繪ちゃん、そんなバイトして大丈夫なの?食べられない?』
「た、食べられないよ!今までの妖怪達は良い人(?)達ばかりだし……」
『花繪ちゃん、妖怪が見えるんだ……お化け屋敷苦手なのに……』
「……苦手なのか」
「あんなオドロオドロしくないから!……そういう事だから、これからも一緒に帰れない日があると思うから……ごめんね?悠鬼ちゃん」
『分かった!じゃあ、一回だけ見に行って良い?見えないだろうけど、どういう感じにやってるかは見てみたいし……邪魔はしないから!』
「安倍さん」
「まぁ、今日なら良いんじゃねぇ?」
受け入れ様としてくれてるいるのは解ってるので、今日ならと安倍の了解が得られた芦屋は安堵の息を吐く。
いつもの仕事ではなくかくれんぼで遊ぶだけなので、比較的危なくないだろうと安倍なりに配慮してくれたのだろう。
「ありがとうございます、安倍さん」
「あまり詮索されない為にだ」
『大丈夫!危険じゃなければ良いよ!……何も知らないままだと心配になっちゃうから』
「悠鬼ちゃんッ……」
「……イチャ付くなよ」
「い、イチャ付いてません!!」
心配してくれている悠鬼に芦屋はきゅんと胸を高鳴らせて見つめるが、安倍に睨まれて慌てて目を逸らす。
先生の頼まれ事や個人授業を受けて何だかんだと寺に来たのが暗くなった頃になってしまい、それでも芦屋は悠鬼を連れて安倍達を探している。
「花繪、こっち」
「禅子!いた!」
『藤原さん?』
「藤原禅子です、花繪の彼女……彼女居たんだ?」
「う、うん」
『彩條 悠鬼です、よろしくね!』
「まだかくれんぼやってるの?」
「こっち」
彼女だと言われると未だ気恥ずかしさは残るが、禅子にも紹介して芦屋と悠鬼はかくれんぼの場所に案内される。
到着したのはだだっ広く墓石がたくさん並んでいる墓地。
明かりもなく雰囲気のある墓地で、安倍は妖怪を探し当てている。
『狐の妖怪って可愛いの?』
「あ?可愛くねぇよ」
「可愛いよ!晴齋のバカ!」
「悠鬼ちゃん、どう?……あの墓石の上にいるけど見える?」
『う~ん……ハッキリは見えないけど、シルエットは何となく分かる』
「そうか」