第30章 魔王な彼【有利/N】
もう一回と言われながら悠鬼に押し倒されて目を見開く有利。
それで大人な甘い雰囲気が一気に無くなり、跨って顔の横に手を置いて見下ろして来る悠鬼の表情は、普段の様に楽しそうに無邪気に笑っていた。
『私で感じてる有利可愛かったの!もっと見た~い!』
「可愛いって言うな!……って言うかもうゴム持ってない」
『ゴムを持ってたって事はその内やる気だったんだ?』
「い、いや……そのっ……」
『ふふ、夏休みは始まったばかりだもんねぇ!いくらでも機会はあるよ?』
「だ、ダメだって!何回もっ……」
『海だってちゃんと遊べてないし』
「!?」
『有利をいっぱい誘惑しないとヴォルフラムくんに負けちゃうでしょー?』
「負けないって!絶対負けないから止めて!」
『有利お顔真っ赤!気持ち善くないしてあげるからねぇ!』
「いやー!やめっ……あっ!」
ゴムを外した自身を再び直に掴まれて刺激され、結局最後は悠鬼のペースになってしまう。
基本、積極的な彼女は面白い事を見付けたかの様に目を輝かせながら嫌がる有利をからかい続けた。
「ほぇ~」
「幸せそうですね、陛下」
「えっ!?そ、そう見える?」
「はい」
「仕事に身が入らない程にな」
「う゛っ」
次の日。
ずっと溜まっていた魔王としての仕事をやらされていた有利は、昨日からの幸せボケが抜けないまま机の前で茫然としている。
微笑ましそうに優しい笑みを向けて来るコンラッドとは対照的に、グウェンダルの的確な厳しい言葉も投げられる。
「今度は僕の番だからな!」
『私だって負けないよー!』
「何してるのー?二人共!」
『ヴォルフラムくんと勝負してるのー!』
「人間のくせに中々やるな!」
『躰動かすのは大好きだから、体育だけはいつも満点なのー!!』
「ハハッ、あんま自慢出来ないんじゃないかぁ?」
『有利もおいでよー!せっかくの夏休みなんだから遊ばないと!!』
「ユーリはへなちょこだからな!そうそう僕には勝てん!」
『へなちょこぉー?あはははっ!!分かるかも~!ちょっと抜けてるよねぇ!』
「何だとぉー!!」
「危ないですから!」