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淡い恋心

第30章 魔王な彼【有利/N】



丁度執務室の下で賑やかな声が聞こえて来たので窓を開けて外を見ると、悠鬼とヴォルフラムがいつの間にか仲良く遊んでいる光景を目にした有利。
共感した二人にからかわれた有利は、窓から身を乗り出して反論しようとしたが、傍に居たコンラッドに阻止されて渋々下りて二人の様子を見る。

「で勝敗はー?」

『今は引き分けなの!』

「次は何で勝負するんだ?」

「野球はやった?」

『野球出来るの!?』

「野球場が近くにありますよ」

『やるぅー!それなら勝てそう!』

「何だと!?女になんか負けるか!」

「言っとくけど悠鬼はソフトボール部のエースだよ?」

「「えっ」」

「悠鬼、後で眞魔国を案内するよ!その時に行きなよ!」

『白馬に乗って!?』

「白馬!?」

『だって有利は王子様なんでしょう?』

「王様だって」

『どっちだって同じじゃん!……そうかお妃様になるにはここの事も知っとかないとダメだよね』

「知らなくて良い!お前がユーリの妃になれる訳ないだろ!!」

『絶対なるもん!……コンラートさん!私の先生になって下さい!読み書きとか歴史とか教えて下さい!』

「陛下より良い生徒かも知れないですね」

「はは、結構努力家だからね」

『有利と一緒に居られるなら私はどんなイヤな事でもするよ!』

「「!?」」

『人間だから女だからってバカにして居られるのも今の内だからね!……見た目じゃ負けてるけど有利を想う気持ちは絶対負けてないから』

「貴様ッ……」

「……」

有利をからかって笑っていた悠鬼の表情は真剣なものに変わり、その視線はヴォルフラムへと向けられている。
まるでソフトボールの試合の時の様な。

彼女の嘘偽りのない言葉は有利もヴォルフラムも驚かせ、有利はそんな彼女を愛おしく見つめると再び机に向かって座り仕事を再開させる。

有利は大量にある仕事の山を黙々と進めて行く。

その姿にギュンターとグウェンダルは顔を見合わせて悠鬼の影響力に目を見張り、コンラートは目を細めて微笑ましく見つめる。



悠鬼は将来を考えて覚悟を決めてくれたんだ。
生涯俺の隣に立つ未来を。

俺達はまだ高校生で子供だけど、経緯はどうであれ俺は魔王になったんだ。

可愛いって言われない様にしないと!


Fin.
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