第30章 魔王な彼【有利/N】
向こうでは笑ったり・拗ねたり・照れたりと可愛い表情しか見た時がなかったが、ここでは怒ったり・泣いたり・寂しそうにしたりと暗い顔ばかり見てる気がする。
悠鬼なりに魔王の俺を受け入れ様としてくれてるのに……
「あの時、悠鬼と一緒に寝れば良かったんだよな。悠鬼に嫌われる方が俺はずっと辛いよ」
『男の子だけどヴォルフラムくん……凄く綺麗だもん!私じゃ負けちゃぅ……』
「そんな事思ってたの?……俺には悠鬼の方がずっと綺麗に見えるよ、それに可愛いっ……」
『んっ……』
不安そうに涙目で見上げて来る彼女と見つめ合うと、縋る様に服を掴んでいる手を握り締めてどちらからともなく、美しい花が咲く中庭で甘く愛おしい口付けを交わす。
誰も二人の間に入る隙間がない程、強く抱き締め合って唇を塞ぐ。
『……有利っ……ッ……』
「!?……っ……ごめん、自分で言ったのに俺も約束守れない……」
悠鬼に耳元で囁かれた言葉を聞いた有利は、一瞬目を見開くが今は同じ気持ちだと思えば、欲望を抑えられないまま彼女の躰を両腕に抱き上げて、城内の奥へと連れて行く。
「本当に良いの?俺初めてだよ?」
『うん……有利となら大丈夫』
悠鬼を抱き上げて二人が入って行ったのは彼女に用意された寝室で、扉の鍵を閉めると有利は彼女をベッドにそっと寝かせて上から緊張した面持ちで問い掛ける。
大事にしたいからと今までキス以上の事をして来なかったのに、この時ばかりは悠鬼と一つになりたいと思わずには居られなかった。
悠鬼の目は迷いがなく真っ直ぐで、有利も覚悟を決めて彼女の胸の中に吸い込まれる様に抱き締め合い、沢山の口付けを交わす。
「……こ、これどうやって脱がすの?」
『背中のフックを外して……』
「う、うん」
『ふふっ、有利凄いドキドキしてる』
「そりゃ初めてだしっ……」
キスをしながら背中に手を回して彼女のドレスを脱がそうとした有利だが、飾りやらリボンやらが複雑に付いているそれは外すのに一苦労。
その上悠鬼が有利の胸に手を当てながら耳を押し付けて鼓動を聞いている為、(格好が付かない!!)と羞恥心と情けなさで居た堪れなくなる。