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淡い恋心

第30章 魔王な彼【有利/N】



(ぁあー!……もうっ……大好きだぁ!!)

悠鬼の寝室から出て自分の寝室に向かっている有利は、廊下で自分の口を押えながら彼女への愛しさに悶えている。

俺だって男だよ!普通ならあそこで手ぇ出してるよ!

彼女との余韻に浸っていた有利だが、今こうしている時にも自分の寝室で待っているだろう婚約者をどう追い出そうか、再びうぅ~んと悩み出す。
今までヴォルフラムの勢いに勝てた時がないが、彼女を拒んで男の婚約者と寝るのは不味いだろう。

(バレたら破局の危機!!)

それを阻止する為にも、有利は腕捲りをして気合いを入れて堂々と寝室に入って行く。




『……有利ぃ~……』

夜中になっても寝付けない悠鬼は、彼の言い分を理解しているものの同じ屋根の下にいる事が分かっていると会いたくなり、寝室から出て行くとヒタヒタと静かな足取りで有利の寝室を訪れる。

有利の寝顔を一目見たら戻ろうと思っていた悠鬼は、ドキドキしながらそっとベッドの中を覗く。

『……えっ』

自分が思っていたのと異なる光景に目を見張ると、息を詰まらせて言葉を失ってしまった悠鬼は、後退りをして何もしないまま有利の寝室を出て行く。

『有……利?……何でっ……』







「あっ、悠鬼!おはよう!……そ、そのドレスも似合ってるよっ」

「貴女が悠鬼様ですか?私はフォンクライスト郷っ……?」

ースパァーン!!ー

次の日の朝になって綺麗なドレスを来て自分の前に現れた悠鬼に、やはり見惚れてほんのり頬を赤らめながら一言褒める有利と、その隣には自己紹介をしようと頭を下げて来るギュンターが居た。

が悠鬼はギュンターを気にも留めず、カツンカツンとヒールの音を立てて真っ直ぐ有利に近付いて行く。

近付いて来る彼女の表情が段々見えて来ると、不穏そうな顔に目を見開いた瞬間、その部屋一帯に響き渡る程の音が聞こえ、悠鬼以外のその場に居た全員が目を見張る行為が行われた。

『何が大事よ!有利があんな嘘付くと思わなかった!!』

「……悠鬼っ……何で」

『何ではこっちのセリフでしょ!?形だけとか言ってちゃっかり婚約者と寝てたじゃない!!』

「!?……違うって!あれはっ!」
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