第30章 魔王な彼【有利/N】
『別れるって……』
「いやいや!それはこいつが勝手に言ってる事だから!……こっちの風習が解らないまま、いつの間にかこいつと婚約者にされててさ……婚約者って言っても形だけだから!」
「形だけってなんだ!?」
『女の子なの?』
「僕は男だ!!」
『えっと、ヴォルフラムくん?……日本じゃまだ同性婚は出来ないと思うよ?』
「ここだったら出来ますよ」
『やぁー!!私が有利と結婚したいのー!』
「!?」
日本ではまだ同性婚が認められて居ないので冷静に受け止めたが、眞魔国ではそれが出来る事を知った悠鬼は慌てて有利の腕を掴むとグイッと自分の方に引き寄せる。
確かに悠鬼の事は好きで付き合っているが、彼女が自分との結婚を考えている事を知った有利は、顔を真っ赤に染めながら驚いた顔を隠せずにいる。
「お前はどうせ玉の輿を狙ってるだけだろ!」
『違うもん!有利にそんな事期待してないよ!』
(何か……それはそれでツラい……)
日本で玉の輿には成れないだろう事は有利も思っているが、悠鬼にハッキリ期待してないと言われたら少し胸がズキッと痛む。
『お姑さんは美子ママが良いの!』
「「はっ?」」
『有利のママは綺麗で可愛いの!』
「だったら俺じゃなくても良くない?」
『えっ』
「お袋の義理娘になりたいなら、俺じゃなくても勝利でも良いって事だろ?」
悠鬼が自分と結婚したいと言っているのは自分が好きだからだと思って居た有利は、まさか母親の方だと知ると余計落ち込み、普段悠鬼にこんな冷たい言い方をしない有利だが、顔を背けながら口を尖らせて拗ねた様に彼女に問い掛ける。
『有利には私が大好きなところがいっぱいあるもん!』
「っ!?」
『優しいし・嘘付けないし・恥ずかしがったり照れたりしたら直ぐお顔真っ赤にしちゃうし!』
「……っ……それは悠鬼がっ」
『それに今日も嬉しかったもん!ダメって言ってたけど海に連れてってくれたし、ここに来た時も気遣ってくれたのもっ……惚れ直したの!もうっ大好きぃ~!!』
「分かった!俺が悪かったからもう止めて!!……悠鬼も綺麗で惚れ直しましたっ……」
『やぁ~!!ちゅーしたぁ~い!!』
「ホントに止めて!ここでは止めて!」