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淡い恋心

第30章 魔王な彼【有利/N】



「んっ……ぁあー、やっぱりこうなったか……」

辿り着いて見慣れた景色を視界に入れた有利は、最悪の事態に一気に脱力してしまう。

渦に巻き込まれて着いた先は、眞王廟にある池の中。

腕の中で気を失っている彼女を見ると、これからどうしようかと酷く頭を悩ませられる。

「悠鬼?……おい」

「陛下、おかえりなさっ……その方は?」

「えっと、ちょっと待って!……その前に……」

悠鬼を起こそうと声を掛けている途中で迎えに来たコンラッドに焦りを見せる有利だが、溺れた相手をこのままにする訳にいかないと物凄い羞恥心を抱きながら口付けをする。

(人前でなんてっ!!)

「!?」

『んっ……ゲホッ!……ゲホッ!』

「悠鬼!大丈夫か?」

『有利っ……ふぇ……死んじゃうかと思ったのぉー!』

「ごめん!もう大丈夫だから!」

「ユーリぃーー!!」

『?』

「げっ」

人工呼吸をして目を覚ました相手を心配すると、思い出したのか泣きながら縋り付いて来る悠鬼を、有利は優しく頭を撫でながら抱き締める。
いつかは言わなきゃならないとは思っていたが、こっちの世界の事にあまり彼女を巻き込みたくないと思って居た有利は、彼女を宥めながら謝る。

コンラッドに紹介しようと顔を上げると、相手の背後から凄い形相で走って来る金髪が見え、首を傾げる悠鬼と裏腹に有利は一番厄介な相手の登場に目を見開く。

「何なんだ!その女は!?」

「ヴォルフラム!ちょっと待って!今話っ「僕と言う婚約者が居ながら浮気かぁ!!」」

『えっ?……婚約者?』

「違うって!違うからな!?……ちゃんと話すから!コンラッド、彼女に服用意してあげて!」

「彼女だと!?」

「はい、陛下」

『ゆ、有利っ!』

「さぁ、こちらへ」

綺麗な金髪の少年に迫られて行ってしまった有利に不安一杯の表情の悠鬼は、コンラッドと呼ばれた男性にタオルを掛けられて眞王廟の奥に連れて行かれる。




「早く説明しろ!有利!」

「だからあの子が来てから話すって!」

「陛下、連れて参りました」

執務室でヴォルフラムに胸倉を掴まれながらずっと捲くし立てられていた有利は、部屋の外からコンラッドの声を聞いて扉の方を向くと、綺麗に着飾られた悠鬼を視界に入れて驚く。
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