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淡い恋心

第30章 魔王な彼【有利/N】



「悠鬼?……キスは止めよう?」

『えっ……有利、私とキスするのイヤなの?』

「違うって!人前でするのを止めてって言ってんの!」

『いやぁー!!』

「イヤって……」

悠鬼の機嫌を損ねない様にとやんわり頼んでも相手は聞き入れず、ぎゅっと手を強く握られて半泣きで嫌がられる。
困っている自分を若干涙目で見上げて来る悠鬼に、ドキッと胸が高鳴ってしまう有利。

『ちゅーしたい時にするの!』

「……ッ……」

(俺のツボを分かってるんじゃないのか?)

したい時にするとハッキリ告げて来た彼女は、じっと真っ直ぐ有利を見つめて来る。
また釣られてここでする訳にいかないと思った有利は、バッと顔を背けて悠鬼の行為は業となのかと疑い始める。

自分がどうすればそういう雰囲気に乗るのか、一年近くも付き合って居れば分かって来る事なのだろうが、有利には悠鬼のしたい時というのが未だに読めない。




『有利ー!』

「!?……それは本当にダメだって!」

『やぁー!有利が意地悪する!』

「意地悪は悠鬼だろっ!!」

海水浴場に着いた二人は其々水着に着替え、先に着替え終わった有利は浜辺で悠鬼が来るのを待って居た。
彼女の元気な声に振り向くと、走って来る相手に有利は慌てて両手をブンブン振りながら距離を取る。
彼女がそのままの勢いで抱き付いて来るのが、容易に予想出来るからだ。

『うぅー』

「ほ、ほら!浮き輪とかボールとか借りて来たからさ!海に入ろう!」

『うん』

拒まれてしゅんと落ち込む悠鬼にレンタルで借りて来た浮き輪やボールを見せると、気を取り直して海の中で遊ぼうと歩き出す。

可愛い水着を着た彼女に抱き付かれて、何も思わない男は居まい。
未だ躰の関係のない自分達に、彼女の肌が触れて来たら健全な有利も我慢出来る気がしない。



『気持ちぃ~!』

「はぁ~……来て良かったぁ」

浮き輪に両腕と両脚を掛けて浮いている悠鬼の隣で、有利も同じ浮き輪に寄り掛かって二人でのんびり波に揺られている。

『な、何!?』

「悠鬼!離れろ!」

『いやぁー!』

二人の周りに渦が回り始めると予測していた有利は悠鬼を逃がそうとするが、慌てる彼女に抱き付かれて一緒に呑まれてしまう。
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