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淡い恋心

第30章 魔王な彼【有利/N】



「危なくなったら悠鬼を近付けなきゃ良いよな……でも俺も予測出来ないし……」

リビングを出て廊下で悠鬼と別れた有利は、自室で着替えをバッグに詰めながら独り言を呟く。
有利が眞魔国に行く方法は、水のあるところなら何処からでも行けてしまい、自ら行ける様にはなったが眞魔国から呼ばれる可能性もある為、魔王である彼にもいつ連れて行かれるかは予測不可能。

不安はあるものの気を付けようと意を決すれば、荷物を持って彼女の待つ玄関へ向かう。




『有利!』

階段を下りて来る有利を見付けた悠鬼は、無邪気に笑みを見せて両手を広げて来る。
デートでの待ち合わせでも、毎回有利を見付けると可愛い笑顔を向けて来る彼女なので、有利もきゅんと堪らなく愛しい気持ちが募る。
暑い夏の中でもそんな彼女を抱き締めずには居られず、傍に近付くとその両手に吸い込まれる様に入って抱き締め合う。

「悠鬼、何処に行くか決めた?」

『決まらないの~!……どっちも行きたいもん……』

「一日でどっちもは無理だって、じゃあ今日は海にしようか?」

『今日は?……違う日ならプールも行ってくれるの?』

「う、うん!良いよ!(何事もなければな……)」

『……っ……有利!』

「んっ!?」

結局は彼女に甘々な有利は、ついプールにも行く事を約束してしまう。
自分の甘さに内心苦笑いしていると、悠鬼の腕が首に回され引き寄せられれば不意に唇を奪われる。
一気に頬を赤く染めて積極的な彼女に戸惑ってしまう有利だが、目を細めて(好きだなぁ)と幸せに浸るとゆっくり瞼を閉じ、暫くの間悠鬼とのキスを堪能した。



「……若いなぁ」

「あら、羨ましいの?」

「……別にっ」

「ふふっ」




(家の玄関で何やってんだっ!?俺!!)

家を出て悠鬼と手を繋ぎながら海に向かっている間、ルンルンと上機嫌な彼女とは対照的に、有利は自分の顔を押えて自己嫌悪に陥っている。
キスをしている途中で背後からの視線に気付いた有利は、我に返って慌てて彼女と自宅を出た。

有利はつい悠鬼に流されてしまう事が度々ある為気を付けようと思うが、隣を歩いている彼女は両親に見られても一向に恥じらいを見せないどころか、人前でもベタベタして来る。
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