第28章 訪問者【半田先生/N】
『見た目と性格のギャップかしら……カッコイイのに内気で消極的で……怖がりで恥ずかしがり屋さんだけど、とっても優しくて可愛いのよ!』
「あんま褒められてる気がしないんだけど?」
『あら、告白したのも私からじゃない。お付き合い始めて一年くらいまで清くんから何もしてくれなかったし……』
「悠鬼さんから告白したっちか!?先生、もっと男ば見せんと!」
『ふふっ……それは仕方がないわ、清くん学生の頃自分がモテていた事に気付いてなかったんですもの』
「「「先生がモテてたぁ!?」」」
『!?』
悠鬼の言葉は半田にとって褒め言葉の様で貶されている様にも聞こえるので、美和達同様自分がモテて居た事に未だに信じて居ない。
美和・タマ・ヒロシの三人が本当に驚いた顔をしているので、悠鬼にはそれが理解出来ずに不思議そうに首を傾げる。
「お、俺このもん取って来るからっ」
「あっ!先生逃げっとか!」
居た堪れなくなった半田は器を持って立ち上がると、漬物を取りにそそくさと納屋に行ってしまった。
そんな彼を見て軽く笑みを浮かべた悠鬼を見たなるは、箸を止めて小さく口を開く。
「先生と離れて寂しくなかと?」
「良く遠恋、続いてるよなぁ」
『えぇ、本当なら一緒にここに住んで支えてあげられたらと思っているけど……えみさんを見てると……あぁ、私もまだまだだなぁって』
「えみさん?」
『あぁ、清くんのお母様よ。今、その方に色々教わってるの……えみさんが毎日清明先生を支えてる姿を見て、私もいつかあぁなれたらって』
「結婚を前提に考えてるのか!?」
『私が勝手にそう思っているだけよ。私の気持ちや行為が清くんの重荷になるなら引くつもりよ……都会育ちの清くんが不慣れな場所で何かを掴もうとしているんですもの、私が邪魔しちゃいけないわ』
久し振りに会った恋人が、郷の子供相手に呟いた本音。
彼女がどれだけ自分を想って待っていてくれたのか知った半田は、片手に漬物の入った器を抱えながら暫くの間、玄関の戸を開けられないまま自己嫌悪と後悔に顔を歪めた。
何でもう少し彼女の事を気に掛けてやれなかったんだろうと。