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淡い恋心

第28章 訪問者【半田先生/N】



「悠鬼はここで待ってろ」

『え、えぇ……』

悠鬼を庭に居させてスパンッと家の戸を開けて入って行った半田は、中から聞こえて来る子供に声を張り上げる。



「お前等!さっさと帰れ!!」

「先生の彼女見せれ!」

「白昼堂々、道の真ん中でキスしてたって……本当?」

「!?……ヒロ!子供に話すなよ!」

「だったらあんな所ですんなよ!俺だって驚いたっつーの!!」

「......っ......」

『あの……ごめんなさい、お見苦しいところを見せてしまって』

庭の方までハッキリ聞こえて来る大声に流石に居た堪れなくなった悠鬼は、足音を立てずにそっと家の中を覗くと子供達に深々と頭を下げて謝罪の言葉を述べる。

『彼と会うの本当に久し振りで、私も少し浮かれてしまったわ……郷に来るまであまり人と会わなかったけれど、場所を弁えないとダメね?清くん』

「あっ……あぁ、悪い」

「清くん!?先生の彼女!!」

『私は彩條 悠鬼と申します、清くんとはお付き合いさせて頂いてます……暫くの間、よろしくお願いします』

「着物美人やねぇ!先生には勿体なかぁ」

『ふふっ、ありがとう……でもそんな事ないわよ?清くんが私には勿体無いのよ』

「悠鬼、そんな事言わなくて良いからっ……お前等!もう帰れよ!」

『あら、お夕飯作るから皆食べて行って頂戴な。清くんの暮らしぶりを聞きたいわ』

「私も二人の馴れ初め聞きたかぁ!」

「聞かせねぇーよ!帰れよぉー!!」

子供達を帰らせたいと思っている半田とは対照的に、夕飯を食べて行く事を勧める悠鬼とはしゃぐ子供に振り回されるのだった。



「悠鬼さんは先生の何処が好きなんだ?」

『えっ』

「余計な事聞くなよ!」

「じゃあ、先生が悠鬼さんの好きなところ答えっちば!」

「うっ……それは……」

何を言っても帰る気のない子供達の中で渋々腰を下ろした半田は、小さなテーブルに六人で食事を始めると悠鬼と共にヒロシと美和の質問責めに遭う。
悠鬼を前にして「好きだ」と言った事のない半田は、子供達の視線とは別に隣から来る眼差しに恥じらいを感じてしまう。
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