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淡い恋心

第28章 訪問者【半田先生/N】



悠鬼の事を話したら郷中の話題になるのは解っていたので、走って行くなるに手を伸ばした時には既に遅く、知られたら一番厄介な二人に話しに行ってしまった。

「いつかは呼ぼうと思ってたけどな」

『ふふっ、ごめんなさい……少しの間、御厄介になっても良いかしら?』

「俺は全然構わないぞ、寧ろ好きなだけ居てくれ」

『......っ......離れてるからそういう事言ってくれるのかしら?』

「悪い、気の利いた事も言えないし……連絡もあまり出来てないし」

『川藤くんに聞いたから大丈夫よ。私の事は気にしないで満足出来るまで頑張って』

「悠鬼」

理解した上で悠鬼は俺を待っていてくれている。
寂しい思いをさせている筈なのに、弱いところを見せる所か背中を押してくれている。
こうして遠い所に一人で来たのが証拠だろう。

そんな彼女に付き合い出した頃の様な愛しい気持ちが湧き上がると、半田は悠鬼の手を掴んで引き寄せて唇を重ねる。

『……んっ……清くん』

「悠鬼……!?」

「!?」

『清くん?』

一度顔を離して見つめ合った後、もう一度と顔を近付けたが悠鬼の背後には良く見知った者が居り、半田はピタッと動きを止めて目を見開くと相手も驚いて硬直している。
目を閉じていた悠鬼はいつまでも来ない事に疑問を持てば、半田の見て居る方へと振り返るが相手は自転車に乗って去って行ってしまった。

「ヒ、ヒロォー!!」

『まぁ……お知り合い?』

「家に帰りたくないっ……」

悠鬼も人に見られて少々恥ずかしさはあるが、半田は羞恥心一杯で頭を抱えながら蹲ってしまう。




『ここが清くんのお家?……随分年期の入ったところねぇ』

「空き家だったからボロいけどな」

『清くん、ちゃんと生活出来てるの?』

「あぁ、周りの人が助けてくれてるからな……やっぱ、集まってんなぁ……」

『?』

川藤から色々話しは聞いていた悠鬼だが、実物を見ると彼がここで生活出来ている事にやはり信じられず、悠鬼が驚いて呆けてしいる一方、半田は家の明かりと大声にげんなりと嫌そうな顔を見せる。
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