第21章 奇跡家の受難【高尾/N】
ー次の日ー
悠鬼が目を覚ますと、朝になっていて隣には大輝が寝ていた。
起き上がると腰に激痛が走るが、悠鬼は必死でここから出ようとタオルを躰に巻いて扉を開ける。
壁を付いてゆっくり歩いて来た場所は……
』
「悠鬼、入っておいで……」
『……っ……』
皆、まだ寝ている時間。
和成の部屋の扉に手を付いて、聞こえるか聞こえないかくらいの小さい声で、想い人の名を囁いた悠鬼。
なのに中から優しい声が聞こえて来るので、悠鬼は泣きそうな顔をして扉を開ける。
「ごめん、悠鬼。助けられなくて、大兄と喧嘩したら俺勝てる自信ねぇし……それに今凄ぇ後悔してる……こんな事しなきゃ良かったってッ……」
扉を開けて中に入ると、和成はベッドに座って悠鬼に向かって両腕を広げていた。
近付くと悠鬼を力強く抱き締めてくれる。
いつもヘラヘラ笑って誰かしら茶化してる和成が、この時は弱々しく辛そうな表情をしている。
『和くん……っ……』
「悠鬼、俺が高校卒業したらこの家出よう?……んで二人で暮らそう」
『!?』
「俺も悠鬼が好き……妹じゃなく女として……実の兄妹だし結婚も子供も出来ねぇけど、俺は悠鬼が欲しい、ちゃんと大事にする」
『……っ……和くん』
「あの時、俺に好きって言ったの……そういう意味じゃねぇの?」
腕の中で悠鬼の頭を撫でると、和成の最後の言葉に首を横に振る。
そして悠鬼は和成の背中に腕を回してぎゅっと抱き締めると、涙目で相手を見つめる。
『私、和くんに抱かれてる時が一番幸せなの……和くんじゃなきゃイヤ!好きなのっ……』
「うん。もう少しの辛抱だから……そしたら幸せになろう、悠鬼」
『うん』
そのまま悠鬼は、和成に抱かれた。
大輝との行為を消す様に。
この家を出たら、二度と悠鬼には手を出させたくない。
誰にも……俺だけを愛する様に……