第21章 奇跡家の受難【高尾/N】
「......ッ......何しやがんだ!真太郎ッ」
「さっさと起きろ」
「うるせェな。人が気持ち善く寝てんのに......」
「お前、今日から父さんの仕事に付いて行くって言っていただろう?」
「......チッ......お前が継ぐモンだと思ってたのに、何で俺なんだよ......」
二十歳になった大輝は、強制的に父の会社を継ぐ事になってしまった。
征十郎は真太郎に継がせ様としていたが、いつまでもフラフラと進路を決めない大輝に、仕事を叩き込むつもりらしい。
大輝を起こした後、真太郎が向かったのは向かい側の部屋。
開けると部屋の住人は、既に起きていて制服に着替えていた。
「あれ?真ちゃん、起こしに来てくれたの?」
「母さんに言われて、仕方無く来たのだよ」
三男の和成は、高校三年生で受験生。
大輝だけでは不安なので、征十郎は和成にも将来自分の会社に就職させようとしている。
なので、一流大学へ進学させる予定でいる。
真面目できっちりしている真太郎と違い、気さくでいつも楽しそうに笑っている。
友達も多いのだとか。
「本当、真面目だなぁ!あ、アイツの部屋には俺が行くから、真ちゃんは敦とテツヤを起こして来なよ?」
「何でだ?」
「な、何でもねぇよ!全員起こすのは大変だろ?だからっ」
「また良からん事でも考えてるんじゃないだろうな?」
疑いの眼差しを向けられた和成は、図星を突かれて黙ってしまうが、急に慌てて真太郎の脇を抜け隣の部屋へとダッシュする。
「待て!和成!」
「やだー!俺が起こすっ......!?」
「......っ......」
和成達が入ったのは、妹でこの家では唯一の紅一点・悠鬼の部屋。
本人は寝ていると思っていたが、既に犬の涼太と四男の敦に寝込みを襲われていた。
和成と同じ高校に通う長女の悠鬼は、二年生に上がり一年生の時から女子バスケ部の部長を務めている。
家の中では、色んな意味で一番可愛がられている。
「あぁ~先越されちゃった」
「今日は和兄に勝ったもんねぇ」
「たまには良いじゃないっスか!いっつも和くんや大輝くんばかりなんスから!」