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淡い恋心

第20章 小さな彼女【一角/N】



一角に言われて初めて自分の両手を見る悠鬼。
そしてその時初めて、自分が小さくなっている事に気付く。


『まぁ!?なんで?』

「それはこっちが聞きたいよ」

「技術開発局で何かされたんじゃねぇのか?」

『されてないわよ!……ただ、あこんさんとおちゃしただけよ!』

「「されてる「じゃない」じゃねぇか!」」

それから阿近に問い合わせても相手にしてくれず、悠鬼は暫くそのままで生活する事になった。

躰が小さくなってしまったので、仕事も家事もいつも以上に大変で時間が掛かってしまう。




「姉さん!鯛焼き買って来たんだけど一緒に食わねぇ……!?」

『あらぁ、れんちゃん!おちゃいれるからまってて?』

「えぇ!?姉さん!?な、何で小さくなって……」

『えっと……』

「阿近の野郎にやられたんだよ……ったく、人の女で遊びやがってっ」

三時くらいになって弟の恋次が十一番隊を訪れると、実の弟には直ぐ悠鬼だと気付かれ驚かれる。
一角は少し不機嫌な顔を見せているが、恋次は姉の可愛さに悶えている。

「姉さん、やっぱ可愛いな!……抱っこして良いか?」

『えぇ、いいわよ』

クリクリの目で無邪気に笑う悠鬼は、昇天してしまいそうな程恋次の心を鷲掴む。
壊れ物を扱う様にそっと姉を抱き上げると、キャーキャー楽しそうにはしゃぐ。

『たかいたかーい!れんちゃん、こんなにおっきくなちゃったのねぇ?』

「……っ……姉さん……」

自分の頭を『良い子良い子』と撫でる姉は、流魂街にいた頃の姿を思い出させる。
今のやちるより少し大きいが、あの頃の姉はまだ幼さがある中で必死に弟を護ろうとしていた。

俺に泣き顔を一切見せず、常に笑顔を見せる姉さんが切なかった。
今の姉さんは、その時の姿を思い出させる。

「姉さん、茶淹れて来てくれ……一角さんが睨んでる…」

『あら、すぐにいれてくるわねぇ?』

一角が悠鬼を抱えている恋次を睨んでいるのに気付き、姉を下すと相手は台所へと向かう。
悠鬼がいなくなったのを見た恋次は、一角に視線を向ける。

「姉さんって、一角さんに泣き顔見せた事あるんスか?」

「ねぇよ……弱音を吐かれた時は何回かあるが……まぁ、それはプライベートだけな」

「そうっスか」

(姉さんらしいな……)

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