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淡い恋心

第17章 任侠一家:更木組・弐【剣八/N】



『お父様、お母様っ……』

「「……悠鬼」」

病室には勘当した筈の私の両親が居たのです。
(何で?)と驚きを隠せない私は、隣に立つ剣八さんを見上げる。

「初めてだし、やっぱ俺達だけじゃ限度があるだろ……だから俺が直接話しに行ったんだよ」

「隆文さん(父)ったらちゃんと話も聞かず、勝手に勘当するんだもの!流石の私も怒るわよ!」

「か、母さん……それはっ」

「隆文さんは黙ってて!……悠鬼っ」

父のやる事にあまり口を出さない母だが、今回ばかりは黙っていられないらしく、母の怒りっぷりに父は縮こまってしまう。
驚いている私達を他所に、母は私を抱き締めてくれた。

「ごめんなさいね、悠鬼……あの時、貴女の結婚を認めてあげられなくて……」

『お母様っ……』

「後から貴女の嫁ぎ先を調べたけど、大事な娘をヤクザなんかにって私も簡単には許せなかったわ……でも、悠鬼が私達に我儘を言ったのはあの時が初めてだったのよね?」

『……っ……』

そう、私はいつも二人の顔色を伺って、自分からあれが欲しいとかこれが欲しいとか、我儘を言わず聞き分けの良い子でいた。
二人が毎日、忙しく働いているのを分かっているから。

「今更とは思ったが、剣八くんが何度かウチに来てくれて……頭を下げてくれたんだ、認めて欲しいと……」

『剣八さんが頭を下げた!?』

父の発言に驚いた私は、そのままの顔で剣八さんを見上げる。

彼はそっぽを向いてしまいましたが、少し照れているのが分かる。
剣八さんは人に頭を下げる様な人ではなく、人の上に立つ方ですから少しというか、とても信じられません。
が実際、剣八さんがそうして下さったから、私の両親はここにいるのですよね?

「剣八くんには言ったが、許したところで公には出来ないし……二人の事をウチのお客様やお得意様に知られては彩條家は潰れてしまう」

『……はい、分かっています』

「だが時々は家に帰って来なさい……剣八くんと百合姫を連れて」

『百合姫?』

「あぁ、この人達に名前を考えて貰ったんだ……華道の家元だろ?だから花言葉とかそういうの考えてよ……お前、そういうの気にするし……」

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