第17章 任侠一家:更木組・弐【剣八/N】
「孫娘の名前を変に付けられても困るからな、そういう事ならと私と母さんで考えた」
「もう隆文さんは寝ずに考えてたのよ」
「ゴホン!……百合姫は姫百合を逆にしたものだ、濃いオレンジ色の花を6月~7月に掛けて咲かせる。花言葉は可憐な愛情と誇りだ……悠鬼は昔からユリ科の花が好きだったからな」
「貴女の様に上品で優しい子に育って欲しいわ」
『お父様、お母様っ……有難う御座います!とても素敵な名前です……』
そうしてやっと両親と和解し、孫を一目見た後帰って行きました。
その時間が夢だったんじゃないかと思う程、とても嬉しくて幸せで、私は剣八さんを強く抱き締めました。
『本当に有難う御座います……剣八さんっ』
「お前は解かりやす過ぎんだよ……活けられた花を見る度に暗い顔をしやがって」
『……すみません』
「これでもう未練はなくなっただろ?」
『はい!……今度実家のお庭をお散歩しましょう?とっても綺麗なんです!……百合姫ちゃんと三人で』
「あぁ」
どちらからともなく、互いの唇を合わせる。
あの時の私の選択は間違っていませんでした。
縁を切られてしまいましたが、こうして彼のお蔭でまた実家の敷居を跨げる様になったんですから。
剣八さんがくれる愛情を、私もいっぱいお返しします。
愛する娘とともに……
「一角……百合姫様に近付くと殺されるよ?」
「だ、だってよォ……姐さんに似て凄ぇ可愛いんだって!ちょっとぐらい抱っこしても良いじゃねぇか!」
「殺されてェのか?……一角」
「あああ、アニキ!?」
『ふふっ、剣八さんったら……弓親さん、抱っこします?』
「いや、殴られたくないんで遠慮しますっ」
『百合ちゃんもいつか素敵な恋をして下さいな』
「!?……嫁にはやんねぇからな!」
「剣八さん、気が早いですって……」
「でもデカくなって姐さん見たいに綺麗になっちまったら、色んな男が寄って来るっスよ!」
『まぁ、一角さんったらお世辞言っても何も出ませんよ?』
「世辞なんかじゃねぇっスよ!マジでっ……」
「一角……その辺にしといた方が良いよ?」
「一角、てめぇは余程俺に殺されてェらしいなァ……あ゛ァ!?」
「ひぃ!?うわァー!!」
そうして剣八さんの過保護は、日に日に増して行くのでした。
Fin.