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淡い恋心

第17章 任侠一家:更木組・弐【剣八/N】



お散歩を終えて帰って来ると、私は家に飾られている神棚の前に正座をする。
神社まで行けないので、両手を合わせてここで安産祈願を祈っている。
これが最近の私の日課です。

剣八さんを幸せにすると言いながら、五年も子供が出来ずずっと考えて居ました。
この子が産まれなかったら、離婚する事も……

『無事に元気な赤ちゃんを……産めますようにっ……あっ……』

そう祈り続けていると、後ろに誰かが座り私の両手を大きな手で包んでくれる。
神頼みなんてする人じゃないのに、両手でぎゅっと握り目を閉じている。

『剣八さん……』

「大丈夫だ、ちゃんと産ませてやる……それにこれも……」

『まぁ!?……こんなにっ……』

「アイツ等なりに色々やってる見てぇだな」

剣八さんが見せてくれたのは、舎弟の皆さんが買って来た沢山の安産祈願のお守り。
中には交通安全や必勝祈願等、少し間違っている物もありますが……

ですがこんなにも沢山の方が、産まれて来るのを待ち望んでくれています。
元気に産まれて来て下さいね?




『剣八さん……』

「あ?」

『私、とても幸せです……愛しています、剣八さん』

「……っ……お前なァ、ヤれねぇ時にそういう事言うんじゃねぇよッ」

『っ!?……ご、ごめんなさい……』

「俺も愛してるっ……餓鬼産まれたらいっぱいヤるからな!」

『もう剣八さんったら台無し……ふふっ、その時はいっぱい抱いて下さいな』

「……っ……」

子供が産まれるまで沢山我慢して下さった剣八さんは、その時も優しくて甘いキスを何度もして下さいました。
キスをしている間、剣八さんの手は私の手を握りながら、大きく膨らんでいるお腹を撫でてくれていました。






「元気な女の子ですよ!おめでとうございます、更木さん!」

『有難う御座いますっ……やっと会えました』

「……っ……」

『剣八さん?この子のお名前は決めて下さいましたか?』

「あぁー……男の名前なら直ぐに思い付くんだが、女の名前は決められなくてなっ……」

『まぁ……なら一緒に……』

「いや、仕方ねぇから頼んで来た」

『えっ?』

そう言って産まれたばかりの子供は看護婦さん達に預け、私と剣八さんは病室に向かう。
病室に入った事で、私はやっと剣八さんの言葉の意味を知る。

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