第17章 任侠一家:更木組・弐【剣八/N】
そして私も更木さんも着替え、お互いの着物姿を見せ合いました。
私の今まで着た居た着物は縁談様に着飾った物だったので、今はもう少し軽くて淡い色の着物を着せて貰いました。
「……っ……良いじゃねぇか、悠鬼」
『ざ、更木さんもとてもお似合いですっ……』
「剣八……」
『えっ?』
「下の名前で呼べよ」
『……っ……け、剣八さん?』
「店の中で見せ付けんといてくれますぅ?僕今フリーなんで」
「煩ェな!知るかよ……金はいつも通りツケとけよ」
「はーい!毎度おおきにぃ!」
『!?』
そう言って剣八さんはまた私の手を引いて、呉服屋さんを出て行く。
状況がいまいち理解出来ていない私は、彼の言動に焦ってばかりいる。
『あ、あの……剣八さん!』
「あ゛?何だ?」
『このお着物どうすればっ』
「やるから着て帰れよ」
『い、いけません!こんな高い物を頂くなんてっ』
「気に入らなかったか?」
『いいえ!……私好みで、とても素敵です……ですがっ……んぅ!?』
話してる途中で不意に引き寄せられたかと思うと、私の唇と彼の唇が触れ合っていました。
あまりの突然の出来事に、私は驚愕して抵抗も出来ませんでした。
剣八さんが離れた事で漸く理解した私は、顔が燃えてしまいそうな程熱くなって行く感覚が襲う。
「俺はお前に惚れた……俺の女になれ悠鬼」
『剣八さんっ……』
それから剣八さんと毎日の様に電話をして、何度もデートに誘って頂いて交際を続けました。
しかし、私は剣八さんに中々自分の家の事を話せないまま、お付き合いしてから一年が経っていました。
剣八さん自身、深く詮索をして来ませんが私にはそれが心苦しく感じてしまい、その気持ちを抱いたまま彼から一番嬉しい筈の言葉を頂きました。
「悠鬼、俺の妻になれ」
『!?』
「俺はお前と結婚してェ」
『ご、ごめんなさいっ……剣八さんとは結婚ッ……出来ません』
「なっ!?」
『ごめんなさい!』
剣八さんからのプロポーズはとても嬉しいですし、差し出された指輪も受け取りたい気持ちは凄くあるものの、父を恐れている私は受け取れずに剣八さんから逃げてしまった。