第17章 任侠一家:更木組・弐【剣八/N】
家を出てから私はずっと、剣八さんの行く方向に付いて行っている。
私達が訪れたのは、川のある土手道。
私と剣八さんが、初めて出逢った場所。
『剣八さん?……どうして……』
「確かに餓鬼が出来たら二人で出掛ける事は減るかもな……お前と出掛けるならここだろ?」
『剣八さんっ……』
私は元々華道の名のある家元で、剣八さんとは住んでる世界が違う者。
剣八さんと出逢ったその日の昼間、私は父が勝手に決めた縁談を断り、逃げて来た場所がこの土手でした。
ある複数の男子高校生達が、川辺に咲いている花達を踏んで歩いているのを見掛け、私が近付いて注意しました。
『あの、貴方達!』
「ん?」
「おっ!着物美人!」
「何スか?お姉さん!……俺達と遊んでくれるんスか?」
『お花を踏んではダメです!こんなに綺麗に咲いてるのにっ……』
「花?」
「ハハハッ!何言ってんだ?ただの雑草だろ?」
『雑草って……』
川辺に咲いてる様な小さな花は、今の若い子達には雑草くらいにしか見られず、ぞんざいな扱いをされている。
その男の子達は私の言葉を気にせず、更に詰め寄って来て妖しい目を向けて来る。
「そんな事より俺達と遊ぼうぜ?」
「こんな良い着物来てるって事は何処かのお嬢様ッスか?」
「うっわ!男を知らないとか?……燃えるー!」
『な、何を言って!?……離して頂戴!』
男の子達の一人が私の手首を掴んで来たので、その手を振り払った瞬間足を踏み外して川に落ちてしまう。
『きゃ!?……えっ……』
川に落ちる瞬間、誰かの腕に包まれる感覚があった。
頭はツンツンと尖って居り、眼帯をした大きな男の人が私の下に入り助けてくれた見たいです。
その方のお蔭で、裾は濡れてしまいましたが全身が濡れずに済みました。
「ぁあ゛?」
「「「ひぃ!?……ぎゃぁあー!」」」
その方が一度睨んだだけで、男子高校生の方々は逃げて行ってしまい、眼帯をしている男性はそっと私を地面に立たせてくれる。
私を庇った事で、代わりにその方は全身ビショビショに濡れてしまい、慌てて男性の顔や服をハンカチで拭う。