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淡い恋心

第17章 任侠一家:更木組・弐【剣八/N】



私は任侠一家・更木組に嫁ぎ、五年目にしてやっと愛する人の子供を授かりました。

剣八さんを愛する形が欲しいと願い続け、中々出来ませんでしたが今はこの子が愛おしくて仕方がないです。
ですが妊娠が分かってからの、剣八さんの過保護がより一層強くなりました。

「悠鬼、あれ程出掛けるなって行っただろうが……何かあったらっ」

『ですが家事も殆ど一角さん達にやって貰ってしまって、退屈なんですもの』

「でも姐さん、その腹じゃあんま動けないんじゃねぇッスか?」

『ちょっとくらいなら……』

「ダメだ」

『もう剣八さんったら……』

産婦人科の卯ノ花先生に教えて頂いた予定日まで一ヵ月を切り、歩くのが大変なくらいお腹も大きくなりました。
今まで私がやって来た家事を、今は剣八さんの命令で一角さんや弓親さん達舎弟の方が、四苦八苦しながらも分担してやってくれています。

やっとの思いで宿った命、私にとって大事なんですが、家事もダメ出掛けるのもダメと言われては少し困ってしまいます。

『なら剣八さん、三十分だけお散歩に行きませんか?剣八さんが居れば良いのですよね?』

「余計ダメですよ!」

「アニキだって狙われてるんスから!」

『でも子供が産まれたら、剣八さんと二人で出掛ける事なんて滅多に出来なくなると思いますし……ダメですか?剣八さん……』

「……っ……三十分だけだからな」

『はい!ありがとうございます!』

ダメだと反対していた剣八さんが折れて下さったお蔭で、私は漸くお家の外を歩かせて頂ける事になりました。

「アニキって本当に姐さんには弱いよなァ」

「子供が産まれたらもっと大変そう……」

「それは俺達もな」





剣八さんも私が妊娠している事を実感する様になってから、今まで以上に過保護になって少し困ってしまいますが、それ以上に剣八さんがとても優しくなり、大切にされてると実感出来るこの日々がとても愛おしい。

今も私が転ばない様に手を繋いで、時々こちらの様子を伺ったりしてくれる。
剣八さんの不安が少しでも拭える様に、私は彼の腕をそっと抱き寄せる。

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