【進撃の巨人】Happy Birthday【生誕祭】
第3章 Happy Birthday Dear Levi 2015
「これはリヴァイのものよ」
「どうして?」
「今日はリヴァイの誕生日だから」
「たんじょうび・・・?」
「そう。リヴァイが生まれた日」
自分の生まれた日・・・?
窓に霜が降り、母を凍えさせるような寒い日に、僕は生まれたの?
「どうして、僕が生まれた日だとケーキを食べるの?」
小さなリヴァイは、この世界の事を何も知らない。
知っているのは、ボロ屋のむき出しになった天井と壁。
断続的にやってくる、借金取りの怒鳴り声。
固いパンと腐ったミルクの味。
糞尿が混じった泥水の匂い。
栄養失調で血の気のない肌、子供らしさが欠落した瞳のリヴァイだが、クシェルは我が子を心から愛おしそうに見つめた。
「嬉しいことがある日は、それをお祝いするためにケーキを食べるのよ」
「僕は、今日が僕の生まれた日でも嬉しくないよ・・・?」
「でも、私は嬉しいの」
その時。
クシェルは嬉しそうに微笑んだ。
病さえ無ければ、美しい人。
リヴァイを育てる、その信念だけは一貫した強い人。
「貴方がこの世界に生まれてきてくれて、私は嬉しいの」
誰がなんと言おうと、この子は私の宝物。
この世界で一番大切で、一番美しい宝物。
「一緒にこうしてお祝いできることが、とても嬉しいの」
自分に残された時間が、あとどれくらいか分からないから・・・
たとえ一回でも、こうしてケーキを用意してあげることができて良かった。
リヴァイは、母を見上げていた。
埃をかぶった暖炉。
割れたガラスから冷たい風が吹き込んでくる窓。
でも、母の腕の中は暖かかった。
そして、その母の顔に笑みが浮かんでいる・・・
「僕の生まれた日だから、母さんは嬉しいの?」
「そうよ」
「そっか・・・」
すると、リヴァイの口の両端も上がる。
「母さんが嬉しいのなら、僕も嬉しい」
同じ黒髪に、白い肌。
「だからきっと・・・今日はお祝いする日なんだ・・・」
その笑顔は、クシェルにそっくりだった。