【進撃の巨人】Happy Birthday【生誕祭】
第3章 Happy Birthday Dear Levi 2015
「リヴァイ、おいで」
自分を抱きしめる、細い母の手。
記憶している限り、母の笑顔を見たことはあまりない。
いつも疲れた顔をしていたし、この世界を忌み嫌っているようだった。
それに、リヴァイが物心ついた頃には、すでに病に侵されていた。
大人になった今だから分かるが、母の仕事は娼婦だったのだろう。
病気もそのために感染したのだと思う。
でも、それを咎めるつもりはない。
彼女は命を削りながら、自分を育ててくれたのだから。
「ほら、プレゼントよ」
椅子に座ってリヴァイを抱きしめながら、クシェルは傾きかけたテーブルの上を指す。
そこには、母の拳ほどの小さなスポンジに、白いクリームが塗られただけのケーキが置いてあった。
そして、数本の細いロウソクが立っていた。
それを初めて見るリヴァイは、不思議そうに首を傾げた。
「あれは何?」
「ケーキよ。ごめんね、こんなに小さなものしか用意してあげられなくて」
ケーキ・・・?
いったいなんだろう。
食べ物だろうか。
もしそうだったら・・・
「母さんが食べて」
地下街の奥の、さらに奥にある無法地帯。
その一角にひっそりと住む自分達は、貧困の極みにあった。
一つのパンを母子で分け合うことも珍しくない日々。
リヴァイにだけ食べさせて、クシェルは何も口にしない日もあった。
だからもし、珍しくて美味しいものならば、母に食べてもらいたい。
すると、クシェルは首を横に振って、骨ばかりの指でリヴァイの前髪を撫でた。