第11章 光
「研ぎ澄まされた危険を回避するための神経は、今では並の攻撃では私を傷付けることも出来ません。全て、見えてしまうのですから」
「皮肉なことだ……。だがそのお陰で、あの日あんたに怪我を負わせずに済んだ」
「ですが、私は避けることで精一杯。自ら刀を取り、戦うことは出来ない」
「いや、それでいいんだ」
斎藤は真っ直ぐ志摩子を見つめる。それでいいと、迷わず声に出しては志摩子の手にそっと触れた。
「俺があんたを守る。どんなものからも、俺が……志摩子を守ってみせる。だからあんたの手は、いつまでも綺麗なままでいてほしい」
「……一様?」
「その手を、血で汚さないでいてほしい。いつまでも、そのままで」
「戦えない私は、ただの足手まといでしかないのですよ? それでも……それでもいいと、仰るのですか?」
触れた先から、斎藤の体温が志摩子にも伝わってくる。温かくて、ともて優しい。
「女は黙って男の背に守られているものだ。女のあんたにしか出来ないことが、あるだろう?」
「……そんなもの、ありません」
「いや、ある」
月明かりが部屋に差し込む。月光に照らされた斎藤の顔は、女のように綺麗で志摩子は思わず見惚れてしまう。目を逸らすことが、出来ない。