第11章 光
「山崎様、後で甘味屋に寄っては頂けませんか? 今の時期は羊羹が食べれると千鶴様から聞きました」
「調査が終わった後で良ければ、連れて行こう」
「ありがとうございます」
山崎は向かった先は、簪屋。主に簪を中心に小物を売っているお店だった。此処で何をするつもりなのだろうか? 二人は店の前に着くと、そのまま中へと入っていった。
山崎の言う通り、店内は男女の客ばかりだった。女性が一人、というのもあるが男性が一人で訪れている様子は今のところ見られなかった。
「そういえば、志摩子君はいつも髪を下ろしているが、簪で結うことはないのか?」
「そうですね……実家にいた頃は、たまにしていましたが。あまりしてきませんでした。私は下ろしている方が好きなので」
「……たまには結っている姿も、見てみたい気はするがな」
「え?」
「だが勘違いしないでほしい! けしてやましい気持ちを込めて、そう思っているわけではないのだ!!」
「え? え??」
「ああ、でも……男が女に簪を贈るなど……変な意味に捉えられかねないか。いや、だが俺にはそんなつもりは」
「や、山崎様?」
急にぶつぶつと独り言を漏らしながら、真剣に何かを考え始める山崎に、志摩子は動揺の色を見せる。どう声をかければいいのやら。此処はそっとしておくのが一番かもしれない、志摩子はそっと山崎と距離を取り簪を眺め始めた。