第11章 光
「おーい志摩子、今ちょっといいか?」
「左之助様? はい、大丈夫ですよ」
原田に呼ばれ、志摩子は小走りで駆け寄る。呼ばれた方向は、どうやら道場の方らしい。中を覗けば「お、きたか」と原田が志摩子を招き入れる。
「どうかなさいましたか?」
「実は隊士の一人が、足を捻ったらしいんだ。そしたら山南さんが、志摩子が最近医学書を読み漁って勉強してるから手当てを頼んでみては? って言うもんだからさ。頼めるか?」
「はい、大丈夫です。少しだけ待っていて下さい」
手当に必要な物を取りに一度道場を出る。すぐに戻ってくると、意外にも器用に手当てを進めていく。それをじっと原田と他の隊士達は見守っていた。
「はい。これで大丈夫なはずです」
「おお! 志摩子お前すげぇな。いつの間にこんな勉強してたんだよ」
「いえ、これはまだほんの少しでしかありません。もっと勉強して、ちゃんと皆様のお役に立てるようになりたいです」
「今でも十分すげぇって。ありがとな」
原田は笑顔で志摩子の頭を撫でた。志摩子は照れくさいのか、恥ずかしそうにけれど嬉しそうに笑った。
「志摩子君! 此処にいたか」
「山崎様。許可はどうでしたか?」
「ああ、何とか副長の許可を得ることが出来た。同行してもらえるか?」
「はい! 勿論です。では左之助様、私は用事が出来ましたのでこれで」
「おう、気をつけてな」
土方の許可も得たとこで、軽く支度を済ませ志摩子は山崎と共に町へと出た。町に出るのは随分久しぶりだった。あの山南さんの怪我の一件以来、志摩子はまた屯所内で過ごしてばかりだった。
勿論その間に、医学書を読み漁り勉強する時間にあてることが出来た。そのお陰もあり、今日こうして隊士の役に立てたのだ。努力が報われた瞬間が此処にある、とても清々しい気持ちでいっぱいだ。
だがやはり町に出るとなると、心なしか浮かれてしまうものだった。