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薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第11章 光



「俺は志摩子を、例え雪村の女鬼が見つかろうとも……必ず花嫁とし迎え入れる。そのために、貴様ら護身鬼は邪魔だ」

「そうか、ならば殺せばいい。俺達が全て死ねば、五芒星の守護は失われるが、もう二度と蓮水の女鬼がこの呪いにも似た力に束縛されることはないだろう」

「……今はまだ、時ではない。いずれ俺が、全ての護身鬼を殺す。それを……伝えに来た」

「なるほど、そういうことか。覚えて、おくよ。風間の坊主」


 一閃の風が吹き、葉と共に風間は姿を消した。栄は溜息をついて、ぐしゃりと髪を手で掴み乱した。もどかしさに耐えるように。


「俺達はただ、この命を持って志摩子を守るだけだ。例えそれが、鬼であろうと……人間であろうと」


 栄は屋敷の奥へと姿を消していく。




 ◇◆◇



 箒片手に志摩子は庭掃除をしていた。少しずつ夏の暑さも緩和され、次第に秋の香りが鼻を掠めていく。すると難しい顔をした山崎が、一人廊下をあるいているのが見える。


「山崎様! おはようございます」

「ん……? ああ、志摩子君か。おはよう」


 挨拶を返す山崎の表情は、何処か暗く思えた。首を傾げながら志摩子は尋ねた。


「どうかなさいましたか?」

「ん……?」

「いえ。なんだか浮かない顔をしているように思えましたので」

「実はとある店に調査のため、立ち寄りたいと思っているのだが。どうも男女の客が多く、一人で入ると怪しまれる可能性がある。それでどうしたものかと、考えていたところだ」

「なるほど……。あ、もし宜しければ私を同行して下さいませ」

「君を……? しかし、万が一何があれば」

「あっ、それもそうですね。軽率な発言でした。申し訳ありません」

「いや、雪村君では女装してもらうしかないからな。君は適任かもしれない」


 山崎は一旦土方に許可を得てくると、その場を離れた。また一人になったところで、志摩子はのんびり掃除を続けていた。と思えば、誰かが遠くの方から志摩子を読んでいた。

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