第9章 嵐
「風間、おやめなさい」
突如、誰かの声が割って入る。姿を見せるは、天霧だった。
「薩摩藩に与する我らが、新選組と戦っても何の意味もないことくらい、百も承知のはず」
「ふん……っ」
天霧は風間の刀を手にすると、彼へと投げる。それを受け取った風間は、興ざめだと言いたげに刀を鞘に仕舞い土方に背を向けた。
「おい待て、俺にはまだお前に聞いておきたいことがある!」
「……なんだ」
風間な視線だけ、土方へと向けた。
「蓮水志摩子は、何者だ。お前の、味方なのか」
「……あれは俺のものだ。それ以上も以下もない。あれは何も知らん……俺が為す目的も、何もかもだ。もしあれから俺の情報を得ようとしているのならば、無駄だぞ」
「そうかい……」
「土方、だったな。……志摩子に伝えておけ」
風間は天霧と共に、この場を去っていく。最後に言葉を残して。
「必ず、迎えに行くと」
その場に残されたのは、傷を負った千鶴と……。
ぎゅっと拳を握りしめ、手を震わせている土方だけとなった。
「ふざけんな……」
その声は、何処か怒りに満ちていた。