第9章 嵐
「大丈夫か!」
永倉が倒れた隊士の元へ駆け寄っていく。千鶴もその後を追い、隊士の傷を見るとすぐに懐から手ぬぐいを取り出した。
「此処は私が」
そう言って布を噛み千切ると、隊士の止血に当たる。
ゆらりと、一歩風間が踏み込む。
「その羽織……新選組か」
「お前……あの時池田屋にいた男、風間千景……だな?」
「……ん? お前は……あの時の男か。志摩子は元気か?」
「何……?」
風間の口から、初めて出る志摩子の名前。土方は動揺しながらも、それを悟られぬように更に強く風間を睨み付けた。
「その様子では、とりあえず生きてはいるようだな」
「お前は志摩子のなんだ!? あいつは、一体お前の何なんだ」
「何だ、その虫唾が走る問いかけは。貴様如きが、俺にそんなことを聞いて何になる? 知ったところで、関係のないことだ」
「お前にとって……志摩子は、見捨てていいほどの奴だったのか」
「……戯言を」
「だからお前はあの場であいつを助けなかった! そうだろう!?」
土方がそう問えば、風間は不愉快そうに眉間に皺を寄せた。