第9章 嵐
「どれでも好きな本を持って行って構いませんよ」
「これ全部、医学の本ですか?」
「全部……とは言いませんが。大方は」
「凄いですね……ありがとうございます」
「何かあれば、お声をかけて下さい。私も、一緒に本でも読んでいるとします」
「山南様も? 宜しいのですか? 私に、合せて下さっているのでは……」
「いえ。沖田君達といるよりも、まだ新選組に関係のない貴方といた方が、落ち着く気がするだけです」
「そうですか……わかりました」
山南はその辺に腰を下ろすと、徐に一冊本を棚から抜き取り読み始める。志摩子も何冊か気になる本を抜き取ると、真剣に読み始めた。
志摩子は暫く新選組を見届けてきたが、いつも怪我を負って帰ってくる隊士達を見ていた。その度に、そんな彼らに自分が出来ることと言えば『おかえりなさい』と声をかけることだけだった。
それがあまりにももどかしくて……そして、もし自分に出来ることがあるとするなら、やはり傷の手当だと思いついたのだ。
雪村は元々、手当の心得があるのかいつも手際よく手当しているのを目の当たりしていた。彼女と同じようになれなくとも、一つでも何か自分に出来ることを探したかった。
一心不乱に本を読む志摩子をちらりと見ながら、何気なく山南が声をかけた。