第9章 嵐
「俺も一緒に行きたかったなぁ。屯所で待機とか、退屈過ぎ」
「君は傷さえ癒えれば、すぐにでも復帰できますよ。それに比べて、私は……」
そう言って、山南さんは自らの左腕をさする。彼はあれ以来、刀を振れなくなってしまった。藤堂はそれを察して、バツが悪そうに顔を伏せた。
「まぁ、大人しく寝てろってことだよ」
その言葉と共に、沖田は藤堂の足を蹴った。
「いってぇ! 何すんだよ総司」
「はいはい」
屯所内へと入っていく二人を見ながら、志摩子は暗い表情を浮かべる山南に視線を向けた。山南はぎゅっと、左腕を掴んでいた。
どう声をかけていいのか迷ったが、志摩子は失礼だと思いながらも、思い切って山南の手に自らの手を重ねた。
「……志摩子さん?」
「あの、此処に医学に関する本はありますか?」
「……どうしたんですか、急に。傷の手当てをするのに、いくつか集めてはいますよ。といっても、専門的なものというよりかは自分で手当てする程度のものばかりですが」
「それでも構いません! 私に、その本を見せてはもらえないでしょうか」
「……どういう、つもりでしょう?」
「私は……此処でただ、皆様をお見送りすることしか出来ません。でも少しでも、私にも出来ることがあるのならやってみたいのです」
「……そうですか。書庫に案内します」
「……! ありがとうございます」
山南に案内され、志摩子は書庫へとやってくる。そこには意外にも、志摩子が想像していた以上に沢山の本が並べられていた。