第9章 嵐
肌を刺激する太陽が、じりじりと都を照らし始める。朝から新選組の屯所内では、隊士達が集まって浅葱色の羽織を着ていた。その中に、千鶴の姿もあった。
局長である近藤の声が響き渡れば、皆一斉に声を上げ"誠"と縫われた旗を手に出陣する。それを見送るのは、山南と沖田と藤堂。そして、志摩子だった。
「山南様、本日はどのようなお勤めなのですか?」
「志摩子さんに説明して、何処まで理解してもらえるのかわかりませんが……ざっくりと説明すると、そこそこのお偉いさんから正式な名を受けて一種の……そうですね、手助けに行ったというところでしょうか」
「山南さん、それざっくりすぎやしません?」
「でもさ、志摩子に一から説明してたらきりがないじゃん? すげぇ今のわかりやすかったと思うけど」
「あのね……志摩子ちゃんにだって、きちんと学ぶ権利くらいはあると思うよ? まぁ、本人がそれを望んでるかは別としてね」
「……申し訳ありません。たぶん、聞いても何処まで理解できるのか、私にも自信がありませんのでそのままで大丈夫です。なんとなくは、わかりましたから」
「そうですか? もっと詳しく知りたかったら、いつでも聞いて下さいね」
「ありがとうございます、山南様」
「それにしてもさ……」
藤堂が羨ましそうに出陣していく隊士達を見つめていた。