第7章 聲
「白い花、名前は知らないけど。君によく似合う」
「……ありがとう、ございます」
「別に。雑草かもしれないけど」
ふっと沖田は冗談のように鼻で笑うと、立ち上がった。月光に照らされる彼は、とても妖艶に美しく見えるのに何処か底冷えするような恐ろしさが見え隠れする。
それは、先程彼が告げた言葉のせいなのか。
「そろそろ寝よう。志摩子ちゃん、朝早いんでしょ? 部屋まで送るよ」
「いえ、私なら大丈夫です。色々と、ありがとうございました」
「どういたしまして? なのかな」
「……肩、抱いて下さってとても安心しました。その気持ちは、嘘偽りない本物です。おやすみなさい」
「……おやすみ」
志摩子が立ち去る。後ろ姿を眺めては、沖田は一人その場で呟いていた。
「志摩子ちゃんって、本当に……何者なのかな」
季節は少しずつ、梅雨へと傾き始めていた。この事件以来、山南は前線から遠ざかることになった。