第7章 聲
「志摩子ちゃんは、次また彼が……今度は目の前に現れた時、どうする?」
「私には……何も、出来ません」
「そういうことじゃない。もし、僕らの邪魔をしてきて……隊士の誰かがまた斬られるようなことがあれば、僕達は彼を今度こそ殺しにかかるだろう。それでも君は、いいね?」
「……それ、は」
「君には何も出来ない。志摩子ちゃんが今自分で言ったように、何も……出来ることなんてないんだ」
「……」
「何も出来ないから、今日も山崎君に送られて帰って来た。もし君と一緒でなければ、土方さんはすぐ山南さんの近くにいたかもしれない。山南さんが、傷を負うこともなかったかもしれない」
「……っ」
「土方さんも土方さんだ。千鶴ちゃんが来てから、皆何処か心に隙が出来ている気がする。用心していないとは言わない、でもね……君は捕虜なんだよ」
沖田の鋭い刺すような視線を感じて、志摩子は勢いよく彼を見た。――刹那。
沖田の刀が、志摩子の首元を捉えていた。身動きが出来るはずもない、彼の目は……本気だ。一歩でも動けば、きっと斬られる。志摩子は動揺しながらも、苦しげに沖田を睨んだ。言いたいことは、あるだろう。
けれどそれさえも、言葉にするのには……恐ろしい。
沖田の目が、すっと細められたと同時に……急に緊迫した空気は解けていく。沖田が息を吐いて、刀を仕舞ったところで志摩子もまた息を吐いた。