第7章 聲
「志摩子、もしかしたら答えにくいことかもしれないが……大事なことだ。知っていたら答えろ」
「……はい」
「天という男、お前は……知っているのか?」
「……彼は……」
未だ震える唇で、声を漏らす。
「彼は、蓮水天と言います。私の……義弟です」
「義弟? そういえば、お前は以前兄がいると言っていたが?」
「私には、数人兄と弟……姉もおります。彼は、天は一番の末っ子で……幼い頃に、行方がわからなくなったはずです」
「そいつと、お前は何かあったのか?」
「いえ……私とは何も。ただ、兄とは物心ついた頃より価値観の違いから喧嘩をすることが多かったと思います。意見の食い違いが続き、ついに天は家から出ていきました。それからは……手を尽し、探しましたが見つからず。死んだ、ものとばかり」
少し落ち着いた志摩子は、離し終えると深く息を吐いた。
「そうか、ということはお前は今日という日まで、そいつが生きていたことなど知らなかったんだな?」
「はい、その通りです」
「……わかった」
俯き続ける志摩子に、沖田はただ黙って彼女の傍に寄り添う。沖田の志摩子を見る瞳は、けして心配の色に染められてはいなかった。
疑心、探り、冷徹、全てが混ざり合った瞳で、彼女を見つめていた。
けして、どんな嘘も許さないとばかりに。
話が終わり、それぞれ各部屋へと戻っていく。そんな中、沖田は志摩子を呼び止めた。