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薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第7章 聲



「天、と名乗る男ただ一人に山南さんは斬られた。他にも、山南さんが連れていた隊士達は皆俺が到着した時には既に半分以上がやられていた」


 土方の言葉に、誰もが疑いながらもまさか……という表情で絶句している。山南の刀の腕は、誰もが理解していた。だからこそ彼は幹部であり、新選組の中では総長とも呼ばれていたほどらしい。

 その彼が、一人の少年に深い傷を負わされたなど……。


「相手は薙刀使いだった。結構な使い手だ……距離の取り方を間違えれば、俺もどうだったか。かなりの威圧感を放っていた。そしてもう一つ、気になることがわかった」


 土方は志摩子へと視線を向ける。目が合った志摩子は、不安げな表情を浮かべながら見つめ返していた。


「天という男は、どうやら……志摩子を知っているらしい」

「……! 私を?」

「"姉様"と……奴はそう呼んでいた」

「……あ……ああ……」


 志摩子は突然、顔を青ざめ震え始める。それに気付いた沖田が、ぎゅっと志摩子の肩を抱いた。


「志摩子ちゃん、志摩子ちゃん! 大丈夫……?」

「あ………総司……様」

「大丈夫。何も、怖い事はないんだよ」

「……は、はい……」


 土方は言いにくそうに言葉を詰まらせていたが、意を決して志摩子へと問いかけた。沖田は志摩子を安心させようと、肩を抱いたままリズムよくぽんぽんとその小さな肩を叩く。

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