第7章 聲
闇夜を切り裂くように、土方は息を切らし山南がいるはずの場所へと向かう。薄暗く、灯りがない場所を敢えて探すように。――不意に、遠くで刀の音が聞こえる。
「……っ、こっちか!」
一層闇が濃い場所へ、土方は滑り込む様に飛び込んでいく。すると、そこには一人の男を囲んでいる隊士の姿と、端で腕を押さえ蹲っている山南の姿があった。
「山南さんっ!!」
「土方君……来た、のですか……」
「当たり前だろう? とにかく……山南さんには手当てが必要だ」
土方は抜刀すると、他の隊士達に告げる。
「お前らは山南さんを連れて、屯所へ戻れ。まだ戦える者は、俺に続け」
「了解しました!」
一部は山南を連れ、この場を離れる。残りは土方の元へ残り、共に刀を構えた。目の前の男は、土方と同じような漆黒の髪を揺らし、その瞳は金色に揺らめいて何処か狂気に満ちていた。
「ああ……姉様の匂いがするっ! あんた、あんたは姉様の何なのだ!?」
「姉様……? お前、何者だ」
「ボク? ボクのこと聞いてるの? ボクは、誰だと思う?」
少年、と言っていいような小柄の男は大きく何かを振り回す。器用に扱うそれは、薙刀。
「そういうあんたは、何者?」
「俺か? 俺は……新選組副長、土方歳三。人に聞いてばかりじゃ脳味噌は詰まらねぇぞ?」
「ふんっ……。僕は、天(てん)」
天と名乗る男は、薙刀を構え目を細めた。同時に、数人の隊士が飛びかかる。しかしそれを嘲笑うように鮮やかな薙刀さばきで、一気に隊士達を全滅させる。