第6章 薫
「土方さんや、他の者達はどうした?」
「それが……途中で山南様に、何かあったらしく……私を山崎烝様という方に預け、歳三様は山南様のところへ参られました」
「……そうか。山崎に送ってもらったのだな、それは……よかった」
「御心配をおかけしたみたいで、申し訳ありません」
「いや、それはいい。丁度皆で食事にするところだったのだ。あんたも一緒に来るといい」
「……はい」
斎藤の後を追いかけて、志摩子は屯所内へと入っていった。
何処かの部屋へと向かう中、だんだんと賑やかな声が何処からか聞こえてくる。
「今朝も俺のめざし三本も食っただろう!」
「俺は育ち盛りだからなぁ、これくらいじゃ足りねぇんだよ!」
「俺だって育ち盛りだっ!!!」
がっと斎藤が戸を開けた。
同時に、言い争っていた人物約二名、藤堂と永倉がきょとんとした顔でこちらを見た。その他、千鶴も含めた新選組の幹部達が集まって食事をしている真っ最中だった。
空気を切り裂くように、沖田が一番初めに声をかけた。
「志摩子ちゃん、おかえり。遅かったね」
「あ……はい。ただいま、です」
沖田を筆頭に、各々挨拶を交わし始め志摩子を輪の中へと入れていく。沖田がちょいちょいと、志摩子を呼んだ」
「なんでしょう? 総司様」
「志摩子ちゃんはこっち、はい、一君ちょっとそこ隣空けて」
「何故俺が……」
「空けてくれたら、一君も隣で志摩子ちゃんとご飯が食べられるのになぁ」
「……」
斎藤はそれ以上何も言わず、大人しく場所を一人分空けた。
沖田はそこに志摩子を座らせると、満足そうに笑んだ。そこへ、一人の男の人が志摩子の前に膳を置いてくれる。