第6章 薫
「歳三様!?」
「悪いな、俺はこれから山南さんのところへ行く。だからお前は連れていけない、かと言って他の隊士にお前を送らせるわけにもいかねぇ。あいつを頼る」
志摩子を連れたまま、土方は花街へと足を踏み入れた。人の輪を掻き分け、とある店の前に着く。
「相堂はいるか?」
「あら、土方さんやないの。ちょいと待っといて」
一人の派手な着物を着た女性がそう告げると、奥へと女は消えていく。すると、すぐに一人の男が姿を見せた。
「相堂、少し話がある。いいか?」
「……わかりました。こちらへ」
相堂に案内され、人払いが済んでいるらしい部屋に二人は通された。
「相堂……じゃないな。山崎、お前に頼みたいことがある」
「副長がわざわざ此処へ出向かれるなど、余程の事情何のでしょう」
「巡察途中、山南さんに何かあったらしい。俺はすぐに現場に向かう、こいつをお前に屯所まで送ってもらいたい」
「こいつ……とは?」
山崎の視線は、志摩子へと向けられる。
「副長、彼女は?」
「詳しい事情は後で話す。とりあえず、新選組で俺の妹ってことで預かってるもんだ。屯所まで、無事に送りくれ」
「了解しました、すぐに支度します」
一旦山崎は部屋を出たと思えば、またすぐに戻ってくる。その時には、よもぎ色の着物に着替えていた。