第6章 薫
「こんな偽物を骨董品などとは、悪いお人ですね」
「なんだと!? 俺の店の品物にケチをつけるのか!?」
「いえいえ、別にそんなつもりじゃないんですよ。ただ……この旦那は、心底真剣に品物を選んでいるように見えました。そんな人に、これを売りつけようなど……酷い話ですわ」
「気に入らないなら帰ってくれ! さあ!」
不運にも土方はその女性共々はじき出されてしまった。土方は睨むように女を見つめた。
「おい、てめぇのせいで追い出されちまっただろう!」
「すみません。とても真剣に見えたので、嘘を教えたくなかったのです」
薄暗さで女性の顔がぼんやりとしていた中、完全に陽が落ち町に灯りが付き始める。そこでようやく、女性の顔をしっかりと目の当たりにする。
とても、千鶴によく似た女がそこにいた。
「……っ」
「私は、南雲薫と申します。突然引き留めた上に、買い物の邪魔をして申し訳ありません。お詫びといってはなんですが、どうぞこれをお受取り下さい」
南雲薫と名乗った女は、綺麗な布に包まれたそれを土方へと手渡した。
「……どうして」
「お詫び、と申し上げたはずです。先程の店で見ていらした物より、きっと彼女は……此方の方が気に入って頂けると思いますよ」
「どういう意味だ」
「女性への贈り物で、けちってはいけませんよ。贈るなら、最高の想いと共に……」
仕方なく土方が受け取れば、南雲は深くお辞儀してその場を去っていった。
土方はそっと、布を開けてみる。