第6章 薫
「そうですか……わかりました。では、行って参ります」
「おう」
志摩子が店に入っていくのを見届けると、土方は遠くを見つめまちゆく人々を眺めながらふと、ある出店に目を止めた。
土方はゆっくり出店に近付いて行った。
「さあさあ、よってらっしゃいみてらっしゃい! 今じゃ珍しくも貴重な骨董品の数々!! 安くしておくよ」
「へぇ……いろんなものが売ってんだな」
「おっ、旦那! お目が高いね。自分で持つもよし、誰かにあげるもよし。損はしないと思うぜ!」
「……綺麗だな」
土方はある物を手にして、じろじろと眺める。
「旦那もなかなか、見所ありますねぇ。もしかして、これにあげるんですかい?」
店主はからかうように、小指を立てて見せる。土方は「そんなんじゃねぇよ」と笑い飛ばしていたが手にある物から、目を離すことはない。
「どんな人にあげるんですかい?」
「……白い、桜みたいな奴だ」
「そんじゃ、これとかどうですかい?」
店主が持ってきた物を手に取る、土方の表情が変わる。
「……花が咲いてるみたいだな」
「でしょう? 白い桜ときたらこれに決まりだ! 骨董品の中でも一番貴重で、この世に二つともない代物ですぜ」
「おや、それはどうでしょう?」
突然、おっとりした表情を浮かべた女性が近付いてきて、それを土方の手から取り上げた。